妹たち(澄谷)

夏は暑い。
当たり前だ。
それだけで悩みがまた幾つも増える。

澄谷『・・・』

練習中のコンディションとか、蓄積してくる疲れとか、《彼女》の思い出とか。
ただ、中には悩みなんて全く無い人もいるのかもしれない。

??『おはよう、澄谷君!』

そう、例えばこの人のように。

澄谷『・・・おはようございます、鈴本先輩』

いや、幾ら何でもそれは言い過ぎかもしれない。
彼、鈴本大輔(すずもとだいすけ)先輩にだって、悩みの一つや二つはあるだろう。

鈴本『一昨日は助かったよ、澄谷君。あのまま負けてたら、今日の試合にまで影響するかもしれないからね。本当にありがとう!』
澄谷『いえ・・・』

鈴本先輩が凄いのは、それを全く態度に出さない事だ。
不自然な位に。

鈴本『まさかあそこで打たれるとはね。まだまだ練習不足って事かな?』
澄谷『・・・』

そんな訳は無い、と思ったがそれを口に出す事はしなかった。
先輩には先輩の考えがあり、軽々しく意見する訳にはいかない。
先輩がそう思うのなら、そうなのだろう。
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