妹たち(澄谷)

敷地内を車がゆっくりと進んでいく。

いざ電話したものの、どう切り出せば良いのか全く考えていなかったオレは挨拶したきり黙ってしまう。
それでも、電話をかけてきた意図を察してくれた二神さんはオレの現在位置を尋ね、わざわざ車で迎えに来てくれた。

二神『お疲れ様でした。お忘れ物はございませんでしょうか?』
澄谷『大丈夫です』

車を降りる。
近くにもう一台、似たような高級車が止まっていた。
二人の女性が乗り込もうとしている。

??『あら、二神』
二神『お疲れ様です』

片方の女性には見覚えがあった。
沙織の母親、三国英里耶(みくにえりか)さんだった。

英里耶『こんにちは、澄谷君』
澄谷『・・・こんにちは』
英里耶『沙織は・・・四ツ倉、分かる?』
四ツ倉『お待ち下さい・・・敷地内からは出られていないようです』

四ツ倉と呼ばれた女の人が、端末みたいな物を見ながら答える。
女性である事は間違いないのだが、黒いスーツ姿という事もあり二神さんと似たような雰囲気を漂わせていた。

英里耶『そう・・・あら?』

二神さんの女バージョンだな・・・等と失礼な事を考えていたその時、一人の女性がジョギングしてるのが目に入った。
やがてこちらに気付き、近付いてくる。

??『マサキ君!お会いできて嬉しいです!!』
澄谷『あ、ああ・・・』

沙織だった。
嬉しそうに手を握ってくる。

英里耶『・・・沙織』
沙織『あ、お母様・・・えっと、いきなりごめんなさい。本日はお忙しい中・・・』

今日の沙織は、上はTシャツで下はジャージ姿だった。
白いTシャツで、一通り運動してきた後なのか汗ばんでいる。
と、いう事は・・・

四ツ倉『・・・お嬢様』
沙織『四ツ倉さん?・・・え、ウソ!』

四ツ倉さんに耳打ちされ、慌てて自分のシャツを見る。
シャツの下が透けてしまっている事にようやく気付いた様子だ。
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