妹たち(澄谷)



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Wataru Kurihashi
白亜の豪邸へ
すっかり暗くなった景色が通り過ぎていくのを、車の後部座席から眺めていた。
これから、どうなっていくのだろうか。

澄谷『・・・』

真っ直ぐにオレを見据えた沙織の顔は、気品に満ちていて芯の強さを感じさせていて・・・でも、何かを訴えているようにも感じられた。
目の前のドリンクホルダーには行きの時と同様に缶コーヒーが挟まっていたが、全く手を付けていない。

澄谷『・・・』

やがて車が停止し、静かにドアが開いた。
家から少し離れた大通りだ。
さすがに自宅前へ高級車で乗り付ける訳には・・・という配慮なのだろう。

二神『お疲れ様でした。お忘れ物は・・・』
澄谷『大丈夫です。ありがとうございました』

二神さんはただ一言『お送りします』と言ったきり、特に何も聞いてこなかった。
後は最低限の会話をしただけだ。
それでもオレが車を降りる時、一言だけ

二神『お嬢様を、よろしくお願いします』

と言い残し、夜の街へと消えていった。
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