妹たち(澄谷)

『結婚』

いきなりそんな単語が出てくるとは、思いもしなかった。

孝造『失礼ながら、君の事を調べさせてもらった。調べるといっても、別に素行とかじゃない。交友関係だ』

『結婚』という言葉が出た後なので、それ程驚きもしなかった。
しかもこの豪邸だ。
探偵を雇うどころか、自前の興信所を持っていたとしても不思議ではない。

孝造『部活動の中に何人か親しい女子生徒がいるようだが、友人以上の関係では無いようだね』
澄谷『・・・』

まず頭の中に浮かんだのは聖先輩が卒業した後、唯一の女子選手となった円だった。
オレもそうだが、拓哉も円を異性として見てないだろう。
髪型もあり、見た目は特に男っぽい訳ではない。
円の場合、性格が明らかに男っぽかった。
むしろ、男勝りといった表現が相応しいのかもしれない。

孝造『そして、普段の素行に関しても特に』
英里耶『・・・孝造さん』
沙織『・・・お父様』

女性二人から同時に窘められている。
テレビで見た時と違い、少しだけ親近感を感じてしまった。

英里耶『ごめんなさいね。気を悪くしちゃったかしら?』
澄谷『い、いえ・・・』
沙織『・・・』

親の立場としては、当然気になる所だろう。
素行どころか、通知表の成績や出席日数まで調べあげていてもおかしくない。
一方の沙織は、父親をじっと睨んでいた。
そして睨まれている方は、バツが悪そうにお茶を口にしている。

英里耶『マサキ君さえ良かったらだけど・・・空きになってる部屋が一つあるから、早速今夜自由に使っても』
孝造『・・・ブッ!』

もし結婚したら尻に敷かれそうだな・・・みたいな事を想像していると、英里耶さんがとんでもない事を言い出した。

沙織『お、お母様!』
孝造『・・・』

顔を真っ赤にして、英里耶さんに抗議している沙織。
お手伝いさんがいないので、孝造さんが自分でテーブルを拭いている。
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