妹たち(澄谷)

英里耶『沙織なの?』
??『はい・・・』
英里耶『入っても大丈夫よ』
??『失礼します・・・』

遠慮がちに一人の少女が入ってきた。
長い髪に、見覚えがある。

??『あ・・・!』

彼女はオレを見ると、顔を綻ばせた。
海に面した公園で会った、『沙織』と名乗った少女がいた。

孝造『・・・沙織』
沙織『あ・・・』

パジャマ姿で。

沙織『き、着替えてきます!』

そのままバタバタと駆けて行ってしまった。

英里耶『フフ・・・ゴメンね?』
澄谷『い、いえ・・・』
孝造『全く・・・』

そういえば、彼女の苗字は『三国』だった。
この二人は彼女の両親なのだろうか?

孝造『すまなかったね、澄谷君。お見苦しい所を見せてしまって・・・』
英里耶『まあ、見苦しいだなんて・・・。可愛かったでしょ?』
澄谷『・・・』

いまいち、状況が掴めない。
部活からの帰り道、二神と名乗る執事に車に乗せられた。
缶コーヒーを飲みながら、到着したのは凄過ぎる豪邸。
そこには日本を代表する一大企業、三国グループの社長と奥様。
そして、先日公園で出会って少女がおりました。

澄谷『・・・』

余計、分からなくなってきた。
第一に、今後どういう展開になるか全く予測がつかない。
『沙織』と名乗った少女を含め、四人で話をするのは間違いない。
執事の二神さんが来たのも、その為だろう。

英里耶『もしかして・・・お茶、苦手だった?』
澄谷『い、いえ。大好きです』

少し冷めてしまったお茶を一気に飲み干す。
何となく、家で飲んでいるお茶とは違う事だけは分かった。

英里耶『私の事も?』
澄谷『・・・ブッ!』

少し吹いてしまった。
ああ、もったいない。

孝造『・・・英里耶』
英里耶『大丈夫よ。私は孝造さん一筋だから』
男二人『『・・・』』

こんなやり取りを続けている間にも、お手伝いの人は
【オレにおしぼりを差し出す】→【テーブルを拭く】→【新たにお茶を入れる】
という流れの動作を淡々と行い、一礼して下がっていった。

孝造『あー、澄谷君。折角だから、こちらのお菓子も・・・』
澄谷『すみません、いただきます・・・』
英里耶『フフッ・・・』
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