ある夏の記憶(澄谷)



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Wataru Kurihashi
公園で会いましょう
澄谷『・・・う、うわあっ!?』

突然、背後から声が聞こえた。
現実と空想の世界が入り混じり、オレは情けない声をあげベンチからずり落ちてしまった。

??『だからそのネタは止めなさいって・・・マサキ、大丈夫?』
??『いや、つい・・・。あ、ちなみにオレにはそっちの気は無いから』
??『し、知ってるわよ・・・』

バカップルがいた。
さぞ、昨日もお楽しみだったのだろう。

澄谷『・・・奇遇だな』

多少の皮肉を混じえて言った。
城咲円に瀬名拓哉。
昨日、一緒に墓参りに行ったメンバーだ。

城咲『うん・・・』
瀬名『ほらよ』

暖かいお茶を寄越してきた。
横で円が何か言いたそうにしている。

澄谷『すまない』
瀬名『で、マサキはこれからどうするんだ?』
澄谷『こっちでもう一泊して、明日の午前中には向こうに戻る』

オレンジ色のキャップを外し、拓哉から貰ったお茶を飲んだ。
プロ入りして以来、実家にも滅多に顔を出していない。

瀬名『少し前に来たんだけど、何か声掛けづらい雰囲気でな』
澄谷『・・・』
城咲『夕飯はどうするの?』

二人がオレの座っているベンチに座る。
拓哉と円もお茶を飲み始めた。

澄谷『いや、まだ決めてない』
瀬名『だったらさ、三人で何処か行こうぜ』
城咲『うん』
澄谷『良いのか?』

オレだけでなく、拓哉も離れた所でプレイする身だ。
しかも海外だと、行き来するにも時間とお金が必要だろう。

瀬名『別に構わないって。でもその後は二人で・・・ふごっ!』
澄谷『・・・』

拓哉の腹に円のボディーブローが突き刺さった。
おそらく直撃だろう。

城咲『適当に探しましょう』
澄谷『そ、そうだな・・・』

気絶した拓哉の肩を担ぎ、円が立ち上がった。
オレも、ベンチから立ち上がり歩き出す。

城咲『ここ・・・サオリンと初めて会った場所なんでしょう?』
澄谷『・・・ああ』

気絶した拓哉を引きずりながら、円が話し掛けてきた。
女子同士という事もあり、円には色々世話になったと言っていた。

城咲『無理に忘れろとは言わないわ、ただ・・・』
澄谷『大丈夫だ』
城咲『そう・・・』

そのまま海に面した柵の所まで歩く。
ライトアップされた大きな橋が見えた。

城咲『拓哉、起きなさい。10数える内に起きないと、海へ投げ捨てるわよ』
澄谷『・・・』

円は自分の鞄をオレに寄越してきた。
そして拓哉の腕を取り、自分の肩に乗せる。
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