ある夏の記憶(澄谷)



×
×
Wataru Kurihashi
公園で会いましょう
いつの間にか空が薄暗くなっていた。
船に巻かれている電飾が光っている。

澄谷『・・・』

今年、オレは活躍できたと自分でも思う。
それが『5年目』なのは偶然だろう。
たまに、『どうして野球をやっているのか』と聞かれる事がある。
そんな時、決まってオレは『野球が好きだから』と答える。
少なくとも、あの日まではそうだった。

澄谷『・・・』

今日、何となくここに来てしまった。
特に理由があった訳ではなく、あの日みたいに自分を見つめ直したかった訳でもない。

『まもなく、出港します。ご利用のお客様は・・・』

水上バスの出発時刻を告げるアナウンスが聞こえてきた。
あれから、一度だけ『彼女』と乗った。
ベンチの右端を見てみる。
当然だが、誰もいない。

何回か、待ち合わせにも使った。
オレはいつも5分前位だったが、『彼女』はいつも先に来ていた。
そして、オレの顔を見て『彼女』はいつもこう言った。



??『やらないか』
9 / 12
21/24ページ