ある夏の記憶(澄谷)

当てが全く無い訳ではなかった。
小学校の頃に遠足で行った公園がある。
海に面しており、水上バスや観光船の乗り場、そして土産物屋まであり、規模もそれなりに大きかったと思う。

あれから制服に着替え、電車に乗ったオレはその公園を目指していた。
夕方のラッシュも重なり、少し混雑している。

聖先輩から『海』と聞いて、真っ先に思い浮かんだのがその公園だった。
帰りは少し遅くなりそうなので『部活の人と夕飯食べて帰る』と母親にメールした。

周辺にはファーストフード店やファミレスも幾つかあったと思う。
今頃は説教されてるであろう拓哉や円達には申し訳無いが、今日はゆっくり気分転換をしよう。

最寄りの駅に着く。
公園への行き方の案内はすぐに見つかった。
オレは何となく弾んだ気持ちで、公園への道を歩き始めた。

海の方から吹いてくる風が、とても心地良かった。
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