野球の島(夢小説)

ユリ『慌てて適当に詰め込んだのがアレだったんだって』
透『・・・』

あんなのを持ってる時点でどうかと思うが。

ユリ『大学時代に買ったって聞いたけど、多分彼氏絡みだよね。一緒に行く為に買ったか、プレゼントして貰ったか』

監督が着ていた水着は、オレ達の想像の遥か上を行っていた。
黒のビキニなのだが、布の面積が異常に小さい。
普段、服の上からでも目立つ物が一部分を除いて惜し気もなく晒されていた。
そして、後ろに至ってはほとんどヒモ。

ユリ『男の人を喜ばせる為だけに存在する物だね』

・・・確かに。
延岡なんか、しばらく凝視した後すぐにシャワー室やトイレがある方へ走っていった。
何人かは即座に海に入り、そのまま出て来ない。

ユリ『やっぱり先生の都合に合わせれば良かったかな?』
透『都合、ですか?』
ユリ『うん。私とマネージャーの皆で水着買いに行ったの。先生も誘ったんだけど、忙しいみたいで』

今回の合宿の為に新調したのだろうか。

ユリ『先生は自分のあるから大丈夫って言ってたの』

隣に座っているキャプテンを見てみる。
おとなしめのワンピースの胸元から谷間が覗いていた。

ユリ『あー、どこ見てるの?』
透『す、すみません・・・』
ユリ『せっかく治まるまで話し相手になってあげようと思ったのに、また反応しちゃうよ?』

からかうような表情になる。
監督ほど大きくはないが、屈むとしっかり谷間が覗いていた。

ユリ『先生、ホントはどんなの持ってくるつもりだったんだろうね?』
透『うーん・・・』

仮にマネージャーの一人が着ていたようなビキニだったとしても、今と似たような状況になっていたかもしれない。
ならば思い切ってスクール水着・・・それはそれで危険だ。
これ以上想像しないように努めた。

ユリ『・・・』
透『・・・』

二人して黙り込んでしまう。
カモメの声が聞こえた。
天気は良く、絶好の海水浴日和だろう。

透『彼氏、いるんですか?』

会話の糸口が欲しくて、思わずそんな事を口に出していた。

ユリ『先生?今は、多分いないんじゃないかな。少し前に先生の所行ったけど、人を呼ぶような部屋じゃなかったよ』

相当散らかっているのだろう。
監督のバックの中は、いつも凄い事になっている。
それの部屋バージョンといった所か。

透『キャプテンは?』
ユリ『私?』

しばらく考え込む。
そして、思いも寄らない答えが返ってきた。
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ユリ『私は・・・多分無理かな』

どういう事なのだろうか?

ユリ『こうして普通に話したり、ちょっとした握手やハイタッチ位はもう大丈夫なんだけど』

キャプテンの表情が硬い。
先程までのからかっているような表情は見られない。

ユリ『あ、男の人ね。手を繋ぐとかになるとちょっと・・・』

男性が苦手という事だろうか?
普段のキャプテンからは、とても想像が付かない。

ユリ『付き合うって事は、当然それ以上の事をする訳でしょ』

冗談を言ってるような顔には見えなかった。

ユリ『いざその時になって、相手に嫌な思いさせちゃいそうだし』
透『・・・』
ユリ『昔ね、ちょっと・・・』

何か、聞いてはいけない事を聞いてしまったような気がする。

ユリ『あ、私じゃないんだけどね・・・』
透『あの・・・キャプテン』
ユリ『ん?』
透『・・・すみませんでした』
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ユリ『うん、いいよ別に』
透『・・・』
ユリ『っていうかさー・・・』

今度はムスッとした顔になる。

ユリ『どうして私にそんな事聞くの?』
透『え・・・』

単なる興味本位です、とは言いにくい雰囲気だ。

ユリ『真理ちゃん。同じクラスなんだけど?』
透『あ・・・』

小林真理。
オレの幼なじみで、学年は一つ上。
確かこの前、パワフルズの菊川選手からサインを貰ったとかで喜んでいた。
ユリ先輩の知り合いの、さらに知り合いらしい。

ユリ『告げ口しちゃおうかな~?先生の水着見て体育座りしてました、って』
透『そ、それだけは・・・』

タブルでヤバイ。
時々二人でバッティングセンターに行くのだが、凄まじい当たりを連発して周囲の注目を集めている。
ユリキャプテンも何度か野球部に誘ったのだが、『自信が無い』と断られたらしい。

ユリ『うーん、やっぱり勿体ないな~。透君からも誘ってよ』
透『うーん、引き抜く形になるとちょっと・・・』
ユリ『そうだよねー・・・はぁー、残念』

キャプテンと並んで打ってた時は、ギャラリーが凄い事になっていた。
制服姿の女の子が二人、とんでもない当たりを連発すれば注目を集めるのは当然の事だと思うが、本人達はキョトンとしていた。

ユリ『一緒に野球やりたかったなぁ~・・・』

ちなみにオレは、真理が野球部に入らない本当の理由を知っている。
どうも、あの監督があまり好きでは無いらしい。
『何となく、合わないような気がする』と、こっそり教えてくれた。
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