ある夏の記憶(澄谷)

水上バスが港をゆっくりと離れていく。
近くには、昔世界中を航海したらしい大型の旅客船が何年も停泊したままになっている。

沙織の墓参りに行った次の日、オレは一人でこの公園を訪れていた。
プロ入りしてから来たのは初めてだが、数年前とほとんど変わらない姿で迎えてくれた。

空いているベンチを見つけ、座る。
目の前には、あの時と同じ光景が拡がっていた。
ちょうどそこは数年前のあの日、オレが座って『彼女』も座った場所だった。
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