マサキとユリ(栗橋)

城咲『いなかったわ・・・』
西条『こっちもダメ』
栗橋『オレも』

おそらく、既に電車か何かで移動している可能性が高いだろう。
あの後・・・オレと西条さんは30分きっかり、城咲さんはそれからさらに15分遅れて戻ってきた。
走り回っていたからなのか、額に汗が浮かんでいる。

西条『入ろっか?』
城咲『・・・そうね』
西条『わっちゃんは時間、大丈夫?』
栗橋『うん』

近くの喫茶店を指さす。
こっちの方に住んでいる知り合いに会いに行った後なので、これから特に用事がある訳でもなかった。

城咲『あ、ちょっと待って』

何処かに電話をかけ始めた。

城咲『・・・電源切ってるみたいね』
西条『知り合い?』
城咲『サオリンの妹』

サオリン、というのがニックネームらしい。
おそらく・・・オレの知っている彼女ではない方の。

西条『妹?いたんだ』
城咲『・・・この前、トライアウト来てたでしょ?恋恋高校の』
西条『ああ・・・三国、由利(みくにゆり)ちゃんだっけ?何かサッパリだったよね。入るには入るんでしょ?』
城咲『最初から、ね』

溜め息をついて、スマホをポケットに入れている。
・・・そういえば。

栗橋『あのさ』
城咲『何?』
栗橋『三国って・・・あのミクニ?』
城咲『・・・そうよ』
西条『確か、ユニにも広告入ってたよね?』

日本有数の企業グループ、ミクニ。
建設や不動産、昨日食べた牛丼や今日のお昼に注文したピザ屋まで業種は多岐に渡る。

栗橋『だったらさ、その妹の事・・・多分、知ってると思う』
西条『まあ彼女、女子野球ファンの間では結構有名だからね。新聞にも載ったんでしょ?』
城咲『・・・らしいわね』
栗橋『じゃなくて・・・その娘が働いている店、知ってるんだけど』
西条『まさか、怪しい店とか?』
城咲『・・・こんな時にやめて』
西条『ゴメン・・・』
栗橋『いや・・・そのまさかなんだけど』

アレを普通の店という人はおそらく、いない。

城咲『ウソ・・・でしょ?』
西条『・・・うわ』
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