マサキとユリ(栗橋)

栗橋『う・・・』

慌てて鞄で前を隠す。

城咲『美月・・・彼に何を吹聴したのよ?』
西条『多分、円が考えている通り』
城咲『アンタねぇ・・・』
西条『まあ・・・要はそういう事よ。男と女って』

ドヤ顔で語る西条さん。
あまりにもその通りだったので、反論のしようがない。

城咲『・・・』
西条『円だって、拓哉がそういう事できなくなったら困るでしょ?』
城咲『べ、別に私は困らないわよ・・・』
西条『本当かな~?』
城咲『・・・それに、困ってるのは彼の方でしょ?』
栗橋『・・・』

・・・色々な意味で。

西条『や~ん、わっちゃんに襲われる~・・・』
城咲『・・・それにしても栗橋君、変わった人と知り合いなのね』
栗橋『変わった人?』

むしろ、知り合いのほとんどが変わっているような気がする。

西条『・・・わっちゃん、今凄ーく失礼な事考えてたでしょ?』
栗橋『い、いや別に・・・』
西条『どんな技が良い?言ってごらんなさい・・・アイタタタ』
栗橋『・・・』

耳たぶをつねられている。
《できるだけ、身体が密着する技》と言いそうになってしまった自分が情けない。

城咲『・・・じゃ、なくて』
西条『ああ、さっき話してた白い服の女の子?』
城咲『うん』
栗橋『ああ・・・そっちね。ファンの娘なんだけど、名前が確か・・・サオリ、だったかな?』

ふと、城咲さんの表情が変わった。

城咲『サオリ・・・ですって?』
栗橋『うん。確か、そう名乗った』
城咲『・・・どうして?よりにもよって、どうしてあの娘が?』
西条『ちょ、ちょっと円?』

動揺を隠そうともしない城咲さん。
練習に参加している間も、彼女のこんな表情は見た事が無かった。

城咲『ありえない・・・ありえないわ!だってあの娘は・・・』
西条『円、落ち着いて!人違いって事もあるでしょう?』
城咲『・・・』

スマートフォンを操作している。
やがて、アドレス帳のページを見せてきた。
そこに表示されていた名前は・・・



三国 沙織
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