マサキとユリ(栗橋)

??『栗橋さん、お久しぶりです』
栗橋『あ、うん・・・』

サオリと名乗る、大学生くらいの女性。
正直、今はあまり遭遇したくない相手だった。
とはいえ、(一応)プロ野球の選手として、それを態度に出す訳にはいかない。

サオリ『その・・・大変でしたね』
栗橋『・・・』

ここしばらくの間に色々な事があり過ぎた。
マスコミこそ(菊川さんの『奇跡』によって)すぐにいなくなったが、練習や試合中にカメラを向けられる事は相変わらず多い。
さらには卑猥な野次が飛び交い、球団スタッフや審判が止めに入る事も何度かあった。

サオリ『あの・・・今日は失礼します』
栗橋『うん・・・ゴメンね』

気の無い返事を返す。
空気を読んだからなのか、今日は胸元を開けていなかった。

栗橋『・・・』

そそくさと去って行く。
そして以前、彼女と言い争っていた黒スーツの女性の事を思い出した。
あれ以来会わないが、彼女とサオリはどういった関係なのだろうか?
自分で蒔いた種とはいえ、これからずっと居心地の悪さを感じなければいけないと考えると、少々ゲンナリする。

??『種って・・・まあ、ある意味そうだよね』

後ろから声がした。

??『美月、心の声を読まないの。・・・しかも今の、かなり酷い下ネタよ』
西条『え~・・・私、何の事だか分からな~い。あ、そうか円は・・・アタッ!』
栗橋『・・・』

女漫才コンビ・・・ではなく、西条美月さんに城咲円さん。
オレと同じ年の女子リーグに所属する選手で、会うのは久々だ。

西条『まあ、何というか・・・仕方ないって』
城咲『そ、そうね・・・』
栗橋『・・・』
西条『・・・わっちゃん、ちょっと耳貸して』
栗橋『?』
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