もう一度逢うその日まで(澄谷)
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Wataru Kurihashi
もう一度逢うその日まで
二神『私の勘違いでしたらお詫び致します。ですが・・・』
澄谷『大丈夫・・・です』
そう返すのが精一杯だった。
二神『今の貴方と同じ目を、6年程前に見た事があります・・・鏡の中に』
澄谷『・・・』
オレがプロ入りして3年目の事だった。
ファームの遠征中に球場近くを散歩していたオレは一人の老女に声をかけられる。
かつて三国家でお手伝いをしていた女性、富永さんだった。
あの一件があってから、二神さんや四ツ倉さんを初めとした何人かはすぐに辞めてしまったらしい。
富永さん自身も腰を悪くしてしまった事もあり、現在は娘夫婦の家で御世話になっているそうだ。
人の良さそうな雰囲気は相変わらずだったが、別れ際に一言
『もう、あの家の事は忘れた方が良いでしょう・・・』
と言った時の彼女の態度が、妙に心に引っ掛かった。
オレに対してというよりは、自分自身に語りかけている。
そのように見えた。
二神『何かまだ、知らない事がある・・・私はそう思います』
澄谷『・・・』
去年、円がそのような事を言っていたような気がする。
そして先程、墓地であった黒いスーツの女性。
彼女も何か、思わせ振りな事を言っていた。
二神『あの方が私に探偵事務所を紹介して下さったのも・・・そういった意味があるのかもしれません』
澄谷『・・・』
二神『ですから・・・』
澄谷『分かりました』
ぶっきらぼうにそう答え、残ったコーヒーを飲み干す。
そして、伝票を手に取った。
二神『・・・』
澄谷『・・・』
二神『興味ありませんか?』
澄谷『・・・ええ』
思わず、そう答えてしまう。
本心とはいえ、少しストレート過ぎたかもしれない。
そう思い、二神さんの目を見る。
澄谷『・・・!』
サングラスの奥に見える瞳、そして口元が僅かに微笑んだような気がした。
そして、彼は口を開いた。
二神『何者かがお嬢様の名を騙っていたとしても、ですか?』
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