もう一度逢うその日まで(澄谷)

澄谷『探偵事務所・・・ですか』
二神『個人経営の小さな物ですが』

差し出された名刺には《二神探偵事務所》と書かれている。
光る模様が印刷された和紙ではなく、ごく一般的な物だった。

二神『若干ですが、割引致します』
澄谷『・・・』

コーヒーを一口すすった。
《沙織を探してほしい》とでも言えば、彼は間違いなく探すだろう。
そして、実費のみ支払う事になるだろう。
そんな事を考える自分が嫌になる。

二神『澄谷様』

突然、改まった口調になった。
初めて会った時の記憶が鮮明に蘇ってくる。

二神『・・・くれぐれも、早まる事のなさいませんよう』
澄谷『・・・!』

身体中に電流を流されたような衝撃が走る。
高校時代の同級生、そして部活の先輩達から心配される事はあってもこれ程ストレートに言われたのは初めてだった。

二神『・・・』
澄谷『・・・』

初めて会った時と全く変わっていない。
全てを見透すようなサングラスの奥の瞳。
思わず、目線を反らしてしまった。
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