もう一度逢うその日まで(澄谷)

一段落し、隣の墓石を見る。
その時初めて、花を買い忘れた事に気付いた。

??『花なら、あるわよ』

突然、後ろから声がした。
花束を抱えた女性がオレを見ている。

??『もしかして、あまり慣れてない?』
澄谷『え・・・?』
??『ブラシかけるの』
澄谷『そう・・・ですね』

女性は黒いスーツを着ている。
年は、オレと同じか少し上くらいだろうか。

??『こんな感じで、持ってみて?』
澄谷『こう・・・ですか?』
??『ちょっと違うかな。えっとね・・・こんな感じ』
澄谷『・・・!』

黒スーツ女の手がオレの手に重なった瞬間、身体中を電流が走った。
忘れていた感覚が蘇り、その場に座りこむ。
あの時と・・・《彼女》の手を初めて握った時と同じだった。

??『ちょ、ちょっと?』
澄谷『う・・・』



確か・・・野球観戦に行った時だったか。
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