もう一度逢うその日まで(澄谷)

インターホンから聞こえてきた女性の声は、心なしか緊張していた。
オレ達の姿は、当然カメラごしに見えているはずだ。
そしてお手伝いさん達にも、オレの顔は知られている。

澄谷『・・・』

しばらくして、一台の車が門の向こうに現れた。
高級な車だ。
そして、後部座席のドアが静かに開いた。

孝造『甲子園・・・残念だったね』

沙織の父親、三国孝造さんだ。
マネージャーが息を呑むのが聞こえる。
以前、テレビで見た事があると言っていた。

孝造『悪いけど、ここで・・・』
澄谷『はい・・・』

門を挟んで向かいあう。
閉まったままの門が、これからの三国家との関係を示しているように感じた。
おそらく、これが彼と交わす最後の会話になるだろう。

孝造『・・・5年だ』
澄谷『え・・・?』

何の前置きもなく、そう告げられた。
戸惑うオレに、さらに続ける。

孝造『その間に残れるだけの成績を残すんだ。もちろん自信が無ければ拒否してもいい』
澄谷『あ、あの・・・』
孝造『こんな事になってしまったのは非常に残念だが、この一年間・・・沙織は本当に楽しそうだった』
澄谷『・・・』
孝造『せめてもの御礼・・・それが嫌なら十字架だと思ってほしい』
澄谷『十字架・・・』
孝造『沙織に・・・君を見せてくれ』

そう告げて、視線を外した。
何も言わず、ただ頭を下げる。
オレがこの意味を理解するのは約3ヶ月後、そして本当の意味を理解するのは何年も後の事だった。
孝造さんが隣にいるマネージャーに気付く。

孝造『・・・君は?』
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