もう一度逢うその日まで(澄谷)

菊川『ありがとう、参考になったよ』
澄谷『いえ・・・』

本当にそう思っているのかは、分からない。
話した内容はというと、使っている用具のメーカーや寮の食事をよく食べに来ていた事・・・つまりは無難な内容ばかりだった。

菊川『澄谷君の同期でバスターズにいるのは、キミを含めて4人か・・・』
澄谷『そうですね・・・』

オレを除くと3人。
そのうち1人は、今年ほとんど二軍生活だった。
そこそこ勝っていた年もあるので、いきなり・・・という事はないだろうが、来年も同じような状況だと厳しいかもしれない。
もう1人は・・・今年に限って言えば二軍にいた期間が少し長かったような気はするが、多分大丈夫だろう。
残りの1人は、控え捕手として一軍に定着しているので全く問題は無い。
打撃がサッパリでこれまで2割を超えた年は無かったが、今年は3割を打っており代打で起用される事も多かった。

菊川『まあ、栗橋君も今年は大丈夫かな・・・』

《今年は》を少し強調したように聞こえた。
今年、キャットハンズに移籍したワタルは左の代打や時にはスタメンとして一軍に在籍し続けている。
ホームランも8本か9本打っており、打率もそこそこだったと思う。
外国人選手ならともかく、切られるような成績ではない。
だからオレは、菊川さんに質問してみた。

澄谷『あの・・・何かあったんですか?』
菊川『いや・・・でも、もういいかな。来週辺り、良くない事になりそうだ』
澄谷『え・・・』

それだけ言い残し、菊川さんは伝票を掴んで店を出ていってしまった。

澄谷『カレー・・・』

そして、ドライカレーの入った袋だけが残されていた。
慌てて後を追った時には、既に姿は見えなくなっていた。
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