夏が終わって(なつき)

なつき『相変わらずだったな』
ユリ『スカートの辺りばかり見てましたね。まあ、その気持ちは分からなくも・・・アタッ!』

女社長2人の出番が終了した。
司会のお笑い芸人が、お世辞にも品が良いとは言えないコメントで場を繋いでいる。

なつき『・・・分かるな』
ユリ『うう・・・それにしても、先生』
なつき『まあ、何というか・・・』

先程まで出演していたのは、野崎維織(のざきいおり)社長と神条紫杏(しんじょうしあん)社長だ。
二人とも、まだ20代の若さにして日本を代表する企業グループのトップに君臨している。
嗚呼、妬ましい・・・ではなく。

ユリ『最初は体調でも悪いのかな・・・って、思いましたけど』
なつき『最初・・・ねぇ』

私はというと、最初の方は特に何も感じなかった。
落ち着いた感じで話す野崎社長に対し、やや尊大な話し方の神条社長。
そして、それとなくスカートの中を見ようとしているお笑い芸人。

ユリ『多分、少し早めましたね』
なつき『そんな感じだな』

私の目からも異変が感じられたのは、後半に入ってからだった。
お笑い芸人の質問に幾つか答える、そこまでは(質問の内容も含めて)想定されていた事だったのだろう。
問題があったのは、その後だった。

ユリ『神条社長、ちょっと見えてましたし』
なつき『・・・』

お互いに質問をぶつけるという流れになり、少しのやり取りの後、明らかに神条社長の様子がおかしくなり始める。
何かを察したのか、野崎社長の方も簡単に答えられるような質問に切り替えて場を切り抜けていた。
《話題の女社長二人がガチ対決!》と銘打たれていたが、結局フォローされる結果となってしまった。

ユリ『ま、いっか。パンツ見れましたし』
なつき『・・・』
ユリ『うーん・・・それにしても』
なつき『どうした?』
ユリ『いえ・・・』
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