夏が終わって(なつき)

なつき『トライアウト、実家の方だっけ?』
ユリ『はい』

ベッドに寝転がりながら答える。
私が恋恋高校野球部の監督になってから最初の女子選手、ユリの希望進路はズバリ《女子リーグ》。
以前に聞いた通りだった。
トライアウトに備えて練習する必要があるので、引退した今でも時々は練習に来る。
そして《MIWA》のバイトにも週に何回かは出ており、私が行くのも基本的にはユリがいる日だ。

なつき『怪我だけは気を付けろよ』
ユリ『はい』
なつき『あと、パンツ見えてる』
ユリ『見せてるんです・・・アタッ!』

その辺にある雑誌を丸めて、ツッコミを入れる。
ユリが進路として希望する女子リーグ・・・つまりは女子選手のみで構成される野球の独立リーグで、ユリにとっては理想卿のような所だろう。

なつき『写真撮るぞ』
ユリ『どうぞどうぞ』
なつき『部員達に見せてやろうか、うん』
ユリ『ぜ、前言撤回ですっ・・・!』

慌てて隠している。
以前、ユリが部屋に忘れていったクオカードにそっくりな構図だ。
その女子リーグだが、遥を含めた何人かの選手がキャットハンズの練習に参加していたらしい。
少し前にこの近くで食事したが、その時に参加していたのだろう。

私がその事を知ったのは、数日前に現部長の延岡経由でだった。
ただ・・・その事を遥に聞くと、彼女にしては珍しくお茶を濁すような感じになったので、以降その話題には触れないようにしている。
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