夏が終わって(なつき)

なつき『ここまで見ておいてアレだが・・・一体何なんだ、コレは?』
ユリ『えっと・・・《柔道界の新星!さわらちゃんデビュー戦 男女対抗ダッグマッチ 30分1本勝負》ですね』
なつき『・・・』

DVDケースの裏を見ながらユリが答える。
ジャケットには、《全て見せます!マスク・ド・アリス総集編》と書かれていた。
結局あの後、止めに入ったもう一人の某司会者(渋い顔の尻)を逆さに持ち上げ、頭から叩き付けた。
それでも何とか立ち上がり、情けない叫び声をあげながら場外に逃げ出した某司会者(渋い顔の尻)。
追いかけようとする覆面レオタードを、他の女子レスラーが止めに入ったとした所で《いくらこのDVDでも、さすがにこれ以上は見せられません!》と画面に表示され、次の試合に切り替わった。
既に見せてはいけないラインを超えていたような気がするのは、私だけだろうか。

なつき『・・・で、最近は観に行ったの?』
ユリ『時々は行ってますけど・・・彼女は少し前に辞めちゃたんです』
なつき『この時の騒ぎで?』
ユリ『いえ、しばらくして自分から辞めちゃったらしいんです・・・。団体にとっても相当な打撃だったと思いますよ』

そう言うと、鞄の中から一冊の写真集を出してきた。
例のマスク・ド・アリスとかいう覆面レスラーが映っている。

なつき『こんなのも出してるのか』
ユリ『はい。今も団体が存続していられるのは、彼女のおかげらしいです』

相当な人気レスラーだったのだろう。
写真集の表紙をめくってみる。
彼女のサインらしき物と《三国由利さんへ》とユリの名前、そして日付が書かれていた。

なつき『この日って、確か・・・』
ユリ『・・・ごめんなさい』
なつき『・・・』
ユリ『でも実家の方なので、実家に立ち寄ったのは事実です』

確かに、その時もお土産を貰った。
いつもは実家から戻ってくると疲れたような表情をしているのに、この時だけは妙に上機嫌だった。

なつき『・・・いきなり凄いな』
ユリ『でしょう?自分以外は全員男性でしたよ』
なつき『・・・』

サインの入ったページをめくってみると、次に目に飛び込んできたのは彼女のあられもない姿だった。
顔には覆面を着けているのだが、下はバスタオル一枚だけの姿でベッドに寝転っている。
他にも例のレオタード姿で俯せになっている写真や、水着姿で四つん這いになっている写真まであった。
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