牛丼屋の乱闘劇(???)

紫乃亜『特盛2つに大盛2つ、お待たせしましたー』

牛丼がテーブルに運ばれてくる。
特盛が私と菊川さんだ。

紫乃亜『・・・何かさ、悪の組織の密談みたいだよ?さっきから物騒な単語がポツポツ聞こえてるし』

続いて味噌汁を持ってきた店長代理の芳野紫乃亜(よしのしのあ)さんが、藍美さんの隣に座っている女性に耳打ちする。

??『悪の組織って・・・』
藍美『まあ実際、そうでしょうね・・・』
菊川『実情はともかく、せめて言葉では否定してくれ・・・』

何故だろう、目の前の光景が滲んできた。

藍美『で、どうするの?ポスターでも作る?・・・もぐもぐ』
菊川『この店にも貼ってもらうか・・・うん、旨い』
??『私達が通報されるのがオチです・・・はふはふ』

悲しみを癒す為に、牛丼を一口食べる。



・・・実に美味しい。
チームメイトと食べに行くチェーン店のも結構好みだが、この店はそれ以上だ。
例えるなら、家庭で作った牛丼と言うべきか。
毎日でも食べに行きたいくらいだ。

??『悪の組織?ヒーローとして聞き捨てならにゃいわね』

突然、女性の声がした。
《ヒーロー》という言葉に私以外の3人が反応する。

??『くろくろキャットの誇りにかけて、成敗してやるにゃ!』
藍美『該当データは?』
??『ありません・・・』

藍美さんの隣の女性がタブレット端末を見て、首を横に振った。
大学生くらいだろうか。
所謂ゴスロリといった感じの服装だが、私の知る《あの人》とは違ってそれなりに上手く着こなしている。
首の辺りに鈴が付いているので、もしかしたら猫をイメージしているのかもしれない。
語尾に『にゃ』を付けてたし、そっちの方が正解だろう。

??『この、大谷美衣(おおたにみい)がお相手するにゃ!』
菊川『食べ終わってからにしてくれ』
美衣『分かったにゃ』

席に座り直す。
それで良いのだろうか?

美衣『変身と食事は終わるまで待つのが、ヒーローのお約束だにゃ』
紫乃亜『超特盛、お待たせしましたー』

一人だと、とても食べきれないような量の牛丼が女性の前に置かれた。

美衣『いただきにゃす・・・はむはむ』
藍美『《すまいる》・・・?』
??『紅ショウガですよ』
紫乃亜『契約農家の方から直接買ってるこだわりの逸品です♪』
菊川『なるほど・・・』
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