ある夏の記憶(澄谷)

次の日。

駅前の広場には、既に人が集まっていた。
懐かしい顔が揃っている。
何人かがオレに気付いた。

『マサキ様のお出ましだー!』
澄谷『様、って・・・』
マネ『すごかったねー、今シーズン』
澄谷『あ、ああ・・・』

野球部の同級生や、マネージャーが声をかけてくる。
こうやって皆と直接話すのも久しぶりだ。

集団の中に、ポニーテールの女がいた。
ムスッとした顔で携帯電話を操作している。

澄谷『円』
城咲『あ、マサキ。悪いわね、遠い所』

少し表情を和らげた。
高校時代とあまり変わっていない。

澄谷『いや・・・ところで拓哉は?』
城咲『寝坊』
澄谷『・・・あとどれくらい?』
城咲『30分』

また不機嫌な顔に戻ってしまう。

マネ『起こしにいってあげないのー?』
城咲『だ、誰がっ!あんな奴・・・』
『お、照れた照れた』
城咲『大体、自分勝手だし時間にルーズだし偏食だし忘れっぽいしおまけに早いし・・・』
マネ『・・・ねえ、円ちゃん?今、とてつもなく聞いちゃいけない事聞いちゃった気がするんだけど』
城咲『はっ・・・!げ、幻聴よ幻聴!!』
『オレにも聞こえたぞー。幻聴』
城咲『忘れなさいっ!』
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