cyan(菊川)

鈴原『ぷはー、デス』
菊川『凄い・・・!』

漲ってきた、というより蘇ってきたという感じだ。
かつてのパワー、とか。

鈴原『飲み干したデスか?』
菊川『ああ、ごちそうさま』

空の瓶を渡す。
鈴原が飲んでいたのはパワリンEX。
陳列棚を見てみると、あまり一般には流通してないゴールドやEXが惜し気も無く並び、ゴールドEXの姿も見える。

鈴原『あまり大きな声では言えないのデスが・・・ウチがやっていけるのは、これがあるからなんデス』

オレがさっきまでいたショッピングモールにも、片仮名7文字の全国何処にでもあるような薬局があった。
当然そこでもパワリンを扱っているが、ノーマルやDXがほとんどで、たまにEXが入っても即座に売切れてしまうらしい。

鈴原『退団するって聞いた時には、さすがにビックリしたデス』
菊川『・・・』

色々あったからなのか、去年の夏からの事がひどく昔の事のように感じた。
パワフルズにいた実感が日に日に薄れてくる。
これがチームを変わるという事なのだろう。

鈴原『本当に良かったデス』

高校を卒業して以来、一人を除いて同級生とは連絡を取っていない。
正確には、卒業できたのかも怪しい。
もちろん、鈴原に会ったのも久しぶりだ。
実家が薬屋をやっていると聞いていたが、まさか本人が店番してるとは思わなかった。

鈴原『菊川君に会えて、メグミ嬉しいデス』

オレの他に客はいない。
鈴原は陳列棚を拭いている。
こちらから会話を持ち掛ける事にした。

菊川『今日は代理?』
鈴原『いや、実はデスね・・・』
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