cyan(菊川)

優亜『手・・・まだ痛みますか?』

フワリとした感覚が手首を包み込む。
先程とは大違いだ。

菊川『いや・・・もう大丈夫』

握る力はそこそこ(といっても女性としては強い方だろう)だったが、手の動かし方に何か秘密があるに違いない。
二人を見送ってすぐのタイミングで、狙っていたかのように激痛が襲ってきた。

優亜『・・・ホントに?』
菊川『うん』

不思議と今は、痛みが完全に消えていた。
気功とか古武術とか、そういう類いの物なのだろうか。

優亜『あの・・・よかったら、コレ使って下さいね』

《バン●リン》と書かれた箱を取り出してきた。
筋肉が炎症を起こしているイメージのイラストが印刷されている。

菊川『大丈夫だけど・・・いつも持ち歩いてるの?』
優亜『・・・はい。実は今も、背中に貼ってたりします』
菊川『歳だから?』
優亜『・・・尚志君?』

笑顔を浮かべたまま身を乗り出し、首に手を沿えてきた。
怖いけど、ブラウスの下が見えてしまう。

優亜『あ!もう・・・尚志君のエッチ』
菊川『・・・今のは不可抗力だ』

胸元の辺りを隠し、子供を叱るような顔で睨んでいる。
・・・リボンの色に合わせているのか、それとも単なる偶然か。

優亜『さて・・・そろそろ行きましょうか』
菊川『ああ』

飲み終わった紙コップ2つをゴミ箱に捨てる。
風を受け、水色のリボンがなびいていた。

優亜『あの・・・ホントに』
菊川『大丈夫。・・・やっぱり仕事?』
優亜『はい。私なんかまだ良い方で、温泉に浸かったら大丈夫なんですけど・・・結構辞めていく人も多いんですよ』

そこまで言うと、リーダーはオレの手を取った。
・・・そして。

優亜『・・・痛みが無くなる、おまじないですっ』

軽く、手の甲に口を付けた。
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