ある夏の記憶(澄谷)

??『すみません・・・』

オレは、今来たばかりの道を引き返していた。
隣には見知らぬ女性。

??『ちゃんと覚えたつもりなのに・・・あ、でも必要無くなっちゃうのか・・・ハァ』

長い髪を青いリボンで纏めている。
年はオレより少し上だろうか。

??『あの子ったら、いっつも私の方向音痴を馬鹿にするんですよっ。酷いと思いません?』

マンションに一人暮らししてる息子が住んでおり、会いに行く途中らしい。
まだ中学生くらいなのかもしれない。

??『あーあ、また覚え直さなきゃ。今度から迎えに来てもらおうかな?』
澄谷『あの・・・』
??『は、はいっ!?』
澄谷『そこに見えるマンションです』

目の前には、さっきまでオレがいたマンション。
さすがにこの距離なら迷う事は無いだろう。

??『あの・・・本当にお忙しい所、すみませんでした』
澄谷『いえ・・・』

今度こそマンションに向かったのを見届け、帰路についた。
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