cyan(菊川)

ユリ『お待たせしました。こちらが当店オススメのビール、そしてこちらがノンアルコールです』
湯野上『はーい、ありがとー』

湯野上と妹の前にジョッキが置かれる。
どちらも見た目は良く似ているが、兄の方に置かれたのがノンアルコールらしい。
前回会った時も、アルコールを全く飲んでいなかった。

リナ『それじゃ、改めて乾杯しましょうか』
舞佳『はい』
湯野上『じゃあ行くよ・・・かんぱーい』

3人とジョッキを合わせる。
オレ達4人は、空いているソファ席に移動していた。
隣のソファーでは、相変わらず毛布を被った女性客が突っ伏している。

舞佳『改めて自己紹介させて下さい。湯野上賢治の妹の湯野上舞佳です。今は、女子リーグで野球してます』

湯野上賢治の妹、湯野上舞佳。
彼女も兄同様野球をしており、現在は女子リーグに所属しているらしい。
前に萱島に貰った、女子リーグのガイドブックに載っていたのを思い出した。

菊川『菊川尚志です。去年までパワフルズ、今年からはバルカンズに所属してます』

《バルカンズ菊川》という単語に、まだ多少違和感を感じる。
口に出すと、移籍したという実感が今だに湧いてくるから不思議だ。

舞佳『あの、菊川さん。よかったら、サイン頂いても大丈夫ですか?』
菊川『ああ、構わないけど・・・何か書くものある?』
舞佳『それなら大丈夫です。確かここに・・・』
湯野上『マ、マイちゃんダメ・・・アタッ!』

伸びてきた手をはたき落としてから、兄の鞄を漁り始めた。
しばらくして、中から黒のマジックと透明な袋に入った新品の色紙が出てきた。

舞佳『すみません、お願いします』
菊川『名前はどうする?』

袋から取り出した色紙と、黒のマジックを受け取りサインをした。
スマホの画面を見ながら《湯野上舞佳さんへ》と上の方に書き、渡す。

舞佳『ありがとうございます。私も左ですので、今度バッティング教えて下さい』
菊川『うん、機会があったらね』
湯野上『ダメだよ~、菊川さん。そういう時は《教えても良いけど、ベッドの中でね》って・・・フゴッ!』
舞佳『妹に何て事言わせるのよ!この変態!!』

腹に拳がめり込んだ。
アスリートだけあって、キレも重さも先日見た湯野上の妻の一撃よりも数ランク上だった。

リナ『・・・』
湯野上『あががが・・・』
ユリ『お、お待たせしましたー・・・』

テーブルに注文した食べ物が置かれた。
早速一つ頂く。

菊川『うん、旨い・・・』
リナ『じゃあ、私も』
ユリ『お待たせしましたー』
舞佳『あ、ちょっとお皿動かしますね』
湯野上『おおっ、イケるねー』

次々と食べ物が運ばれてくる。
湯野上も復活し、4人で食べ始めた。
せっかくなので、前回食べなかったメニューも試してみたい。
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