cyan(菊川)

リナ『お待たせ。入りましょうか』

電話を終えたリナが戻ってきた。
タクシーを降りた途端、電話してくると言って少し離れた所へ行ってしまった。

菊川『こんばんは・・・』
ユリ『あ、いらっしゃいませー。カウンター席で大丈夫ですか?』

店内に入った。
女子高生の店員がテーブルを拭いているが、例のオカマ店長の姿は見えない。
女性客が一人ソファーで俯せに寝ており、毛布が掛けられていた。

ユリ『店長ー!うーん、困ったなー・・・』
リナ『店長はどれ位前からいないの?』
ユリ『えっと・・・少し前に予約のお電話が来たんですけど、その時には既に・・・』
リナ『そう・・・』

時期によっては予約しないと入れないのだろうか。
実際、食べ物は結構美味しかった。
店長も見た目はともかく、話してみると意外に楽しかったりする。
隠れた名店、みたいな感じで紹介されていても不思議ではない。

ユリ『あ、あの・・・ご注文はどうします?』
リナ『とりあえず、オススメのビールで』
菊川『同じく』
ユリ『かしこまりました。少々お待ち下さい』

店内を見てみる。
今、自分達がいるカウンター席の他にソファー席もあり結構広い。
ビールのジョッキが置かれると同時に、奥の方にある扉が開いた。

ユリ『お待たせしました。あ、店長』
みわ『あら、お客さん来てたの?ゴメンなさいね~、ちょっとお花を摘みに行ってて・・・』
菊川『・・・』

薄気味悪い台詞と共にオカマ店長が現れた。
顔を赤らめているのが余計に気持ち悪い。
しかも、何となくツヤツヤしている。

みわ『あら、ご無沙汰ね』
リナ『・・・お久しぶりです、みわちゃん。ユリちゃんも』
ユリ『あ・・・はい』
リナ『前にね、来た事あるのよ』
菊川『あ、そうなんだ・・・』
リナ『素敵な店だから、尚志とも来てみたかったの』

リナが笑顔を向けてくる。
一瞬だが、数年前に戻ったような錯覚さえ感じた。

みわ『まあ、嬉しい・・・』
リナ『夫です。一応、プロ野球の選手です』
菊川『・・・初めまして、菊川尚志です。今年からバルカンズでプレーしてます。妻がいつもお世話になっております』

それとなく、オカマ店長にアイコンタクトを送ってみる。
察してくれるだろうか。

みわ『ウフン★初めまして。店長のみわです。素敵なご夫婦ね、妬けちゃうわ~』
ユリ『・・・アルバイトの三国由利です。私も高校で野球してますので、良かったら色々教えて下さい』

・・・上手く察してくれたようだ。
少し多めに出すとしよう。
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