cyan(菊川)

ベンチから試合展開を見つめる。
時々、素振りをしたりキャッチボールに付き合ったりする。

『ファールボールに、ご注意下さい・・・』

既にバルカンズはピッチャーが何人か変わっており、次の9番も代打だろう。
そして、相手チームの2番手ピッチャーは右。
このままいけば、おそらく自分が出る。
もう少し素振りをしようとした、その時だった。

??『菊川』

皆木監督が近くに来た。
少し表情が硬い。

皆木『東(あずま)の所で出て、そのままライトに入ってくれ』
菊川『・・・分かりました』

東に何かあったようだ。
さっきのダイビングキャッチだろう。

西田『期待してるんだなー』
菊川『はい』

監督に続いて、西田打撃コーチも話しかけてくる。
現役時代は強打を誇っていたらしい。
・・・今は単なる大食らいだが。

『5番、サード・・・』

キャッチボールの相手を探そうとして、止めた。
今日、東は7番ライトで出場している。
次の打席が終わったら、ネクストに入らなくてはいけない。
自分のヘルメットを取り出す。

猛田『お、先輩出るんスか。汚名挽回、期待してまッス!』
六道『汚名返上だ、馬鹿者。・・・菊川先輩、頼むぞ』
菊川『・・・ああ』

アホの猛田と女性捕手の六道の後押しを受け、素振りを始めた。
6番バッターが初球をセンター前に弾き返す。
そして、自分の登場曲が流れ始めた。

『バッターは7番、東に変わりまして、菊川。バッターは菊川、背番号・・・』

歓声が心地良い。
気持ちを高め、左バッターボックスへ向かった。
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