cyan(菊川)

藍美『あのねぇ・・・どうして止めなかったのよっ!』
菊川『そろそろ帰る時間だったから』

朝まで飲み明かして、そのまま次の日の試合に出るような選手もいるにはいるらしいが、オレにはとても無理な話だ。
しっかり睡眠をとるのも、プロとしての務めだと思う。

藍美『・・・ああ、もう最悪~!』
菊川『災難だったな』
藍美『そういえばリップクリームやけに減ってたような・・・イ、イヤァァァー!!』

頭を抱え、悶えている。
正直、このマッド女以上にあのメガネとは関わりたくない。

藍美『どうしてくれるのよ!』
菊川『新しいの買えば?』

財布から千円札を一枚出し、渡す。

藍美『そういう問題じゃないでしょ!』
菊川『とか言いながら、懐にしまうな』
藍美『慰謝料よ、慰謝料』
菊川『・・・』

心の底から嫌そうな顔をしている。
多少は同情しなくもない。

藍美『この前も鞄に入れた下着無くなってたし・・・』
菊川『スケスケランジェリー?』
藍美『買える訳無いでしょ、そんな高いの!・・・あームカつく!!』

憤慨している藍美はほっておいて、萱島の方を見てみた。

萱島『・・・ん!』

相変わらず無我夢中でバットを振っている。
さっき初めて会った時とは違い、とても生き生きとしていた。

藍美『大体、何でいっつもあの女とかリーダーじゃなくて私のばっかりなのよ!クソ眼鏡ッ!!』
菊川『・・・』

隣からヒステリックな声とペットボトルを叩き付ける音が聞こえてくる。
実に耳障りだ。
大学生風の男がこっちを見てきたので、軽く頭を下げた。

藍美『眼鏡は変態だし、リーダーは方向音痴だし、もう一人は何か怖いし・・・ホント使えない連中の集まりよね、この班は』
菊川『恐れ入ります』
藍美『・・・』

慇懃無礼に返してみる。
冷たい目で睨まれた。

菊川『で、リーダーと怖い女は?』
藍美『怖いのはさっきまでいたけど、別件でどっか行っちゃった。リーダーは後で合流する予定だったけど・・・迷ってるわね』

腕時計を見ながら答える。

菊川『バッセンにいるって、メールした?』
藍美『うん。でも、やっぱ迎え寄越さないとダメか・・・。尚志、頼める?』
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