cyan(菊川)

菊川『じゃあ、彼女が・・・』
??『ええ・・・』

白衣を着た女が答える。
彼女の横にはもう一人、中学生位に見える少女がいた。
探るような目でこちらを見ている。

菊川『・・・名前は?』
??『神条・・・紫杏』

きごちなく答えた。
神条紫杏(しんじょうしあん)。
複合企業体、ジャジメントグループの社長だ。
容姿等は多少似ていなくもないが、態度や仕草に明らかな違和感を感じる。

菊川『もう一つは?』
??『えっと・・・萱島楠葉(かやしまくすは)・・・』

いかにも、その辺の駅名から適当に付けたような名前だ。
こちらが普段名乗る名前になる。
プライベートネームという表現で合っているだろうか?

??『楠葉、ちゃんと相手の目を見て答えなさい。・・・仮にそうする価値の無い相手だとしても』
萱島『え・・・?えっと』
菊川『・・・一言余計だ』

気まずそうにオレと白衣の女を見比べている。
白衣を着たこのいけ好かない女は、紫香楽藍美(しがらきあいみ)。
歳はオレより5つか6つ下だが、立場的にはこの女の方が上だ。

萱島『す・・・すみません・・・』
菊川『ああ、大丈夫』

本当にすまなそうにしてる。
そんな彼女のオドオドしている姿も、その内に見られなくなるだろう。
《研修》を経て、彼女は神条紫杏を演じる事になる。
半年も経てば、大分変わるはずだ。

藍美『そうそう、彼は菊川尚志(きくかわたかし)。一応、プロ野球の選手だから』
菊川『一応って・・・』

酷い言われようだ。
所属するパワフルズの選手層が薄い事もあり、年齢の割には活躍してると思うのだが。

藍美『分かってるとは思うけど、この娘に手を出しちゃダメよ』
菊川『出すかっ』
藍美『あ、ちなみにね。胸、私くらいはあったわよ』
菊川『・・・』
藍美『ほ~ら、見てる見てる』
萱島『あ・・・』

戸惑ったような表情でこっちを見てくる。

藍美『気を付けなさいね、楠葉。男はみんなこうだから』
萱島『え・・・?は、はい・・・』
菊川『・・・』

何だか腹が立ってきた。
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