財閥の娘(栗橋)

菊川『黒スーツの女?』
栗橋『はい』

30分程が経った。
どうも菊川さんは女子リーグの誰かに原因があると見てるらしく(実際そうかもしれないが)、彼女達についてしきりに聞いてくる。
正直、練習に参加した経緯や西条さん達の立場を考えるとあまり話したくなかった。
そこで、以前会った黒スーツの女の話題を出してみた。

菊川『マスコミじゃなかったら、探偵とかかな?』
栗橋『かもしれないですけど・・・』

身長や髪型、言葉に訛りがあったか等を尋ねてきたが結局菊川さんにも分からないようだった。
その時の萱島さんの仕草についても色々聞かれたが、怯えていたのは間違いなかったと思う。

栗橋『演技には・・・見えませんでしたね』
菊川『・・・そうか』
栗橋『菊川さん?』
菊川『とにかく、今度遭遇したらすぐに連絡してくれ』
栗橋『分かりました』

ただ、その時に《ワタル》と言われた事は言わないでおいた。

菊川『じゃあ・・・また何かあったら』
栗橋『・・・はい』

菊川さんが伝票を手に立ち上がる。
自分の分を払おうとしたが止められた。

栗橋『いや・・・でも』
菊川『この一件が済んだら奢ってよ』
栗橋『・・・分かりました』
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