財閥の娘(栗橋)

みずき『あ、お釣りは結構です』

オレ、矢部君、そしてみずき先輩。
練習場から少し離れた所へタクシーで向かい、アーケード街にある喫茶店に入った。

みずき『例の店貸し切っても良いんだけど、あの娘の行き付けらしいからね』

キャンプの時と同様、萱島さん絡みという事だろう。
3人分のアイスコーヒーがテーブルに置かれた所で、話は始まった。

みずき『・・・栗橋君から見て、どうだった?』
栗橋『多少緊張しているようには見えましたけど・・・』
矢部『練習は普通にこなしていたと思うでやんす』

みずき『うん。多分私以外に気付いている人はいないと思う。ただ何というか・・・嫌な予感がするの。女の勘なのかは分からないけど』
栗橋『・・・』

3人して黙り込む。
彼女の周りで最近変わった事・・・それは一つしか思い浮かばない。
女子リーグの選手数人がキャットハンズの練習に参加している事だ。

みずき『別に貴方達がどうのというわけじゃないわ。私も今回の練習参加自体は賛成な訳だし』
矢部『やんす・・・』
みずき『それに・・・少なくとも、昨日は特に変わった様子は無かった』

西条さんを始めとした女子リーグの選手達は今日から練習に参加している。
昨日は自己紹介とロッカーの振り分け、近くのホテルへのチェックインを済ませただけだ。
一応みずき先輩には、今回の経緯を話してある。

みずき『・・・まあ、良いわ。何かあったら私に報告、OK?』
栗橋『はい』
矢部『やんす』

この後、3人で夕食を食べて(もちろんみずき先輩の奢りで)解散した。



そして数日後、みずき先輩の予感は的中してしまう。
2 / 9
40/47ページ