新天地へ(栗橋)

鞄から何かを取り出した。

澄谷『手ぶらじゃ悪いからな』
栗橋『いや、構わないって』

マサキはオレの部屋に来る時、必ず何か持ってくる。
いつもは缶コーヒーとかだが、今日は書店の紙袋を寄越してきた。

栗橋『開けていいか?』澄谷『ああ』

紙袋を開けてみる。
一冊の本が出てきた。
表紙にはユニフォームを着た、青い髪の女性が写っている。

栗橋『キャットハンズ、オフィシャルガイドブック?』
澄谷『今年のだが・・・何か参考になると思ってな』
栗橋『サンキューな、今度読ませてもらうぜ』

マサキが帰った後、軽く目を通してみた。

ページをめくりながら、知り合いのページを探す。
あまり知っている選手はいない。
女子選手の橘みずきさんと、彼女と同期で入団した外野手の先輩。
オレが知っているのは、その二人を除くとあと一人くらいだった。

キャットハンズには、数年前にもう一人女子選手がいたが、怪我か何かで一年で引退してしまった。
ポジションは、セカンドかショート辺りだったような気がする。

引退した翌年はテレビや雑誌に出ていたが、最近はほとんど見なくなった。
プロ野球生活は引退後が一番大変だと聞いた事があるが、彼女も例外では無いらしい。
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