財閥の娘(栗橋)

??『お疲れ様です』
栗橋『お疲れ様です。本西さん、どうでしたか?』

練習が終了した。
今回の参加メンバーの中では最年長の本西遥さん。
スポーツドリンクを飲んでいる。
オレも自分のを一口飲んだ。

遥『そうですね・・・色々と新鮮でした』
栗橋『新鮮?』
遥『はい。例えば、私の投球フォームを細かく撮影して、それを一枚一枚分析しただけるみたいです。さすがNPBは凄いですね』
栗橋『そ、そう・・・』

それ・・・多分変な事にも使われますよ、とは口が裂けても言えない。
《3人娘》の事を聞こうかと思ったが、あまりプライベートに踏み込むのもどうかと思ったのでまたの機会にした。

??『あ、お疲れ様です』
栗橋『お疲れ。えっと・・・』
??『田崎羽入(たざきはいる)です。あの、栗橋さん』

続いて会ったのは、田崎羽入さん。
長い髪を後ろでまとめている。
彼女は萱島さんと同じ、《紫》の所属らしい。
バッティングフォームを何十枚も撮られていたが、それも・・・言わない方が良いだろう。

栗橋『何?』
田崎『以前、萱島さんを通じてサインをいただいて・・・本当にありがとうございました』
栗橋『ああ・・・そういえば』

それで何となく、聞き覚えがあった訳だ。

田崎『写真・・・お願いできますか?』
栗橋『あ、うん』

彼女の隣に並び、手を差し出す。
程なくして彼女の手が握られるが、何というか・・・握るというよりは、絡ませているといった表現の方が相応しい。

田崎『あ!ごめんなさい、つい・・・。これ・・・実は今回は来てない人なんですけど、彼氏さんが来た時に試合後のお見送りでこうやって握るらしいです』
栗橋『周りにバレないように?』
田崎『はい・・・まあ、バレてるんですけどね』
栗橋『はは・・・』

考えようによっては、ある行為を連想させるような絡ませ方にも思えた。
さすがにそのままではマズイと思ったのか、普通に握り直してスマホで撮影した。
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