財閥の娘(栗橋)

栗橋『・・・』

ミットが小気味良い音を立てている。
投げ込みをしているのは、女子リーグの本西遥さん。
直球以外も、幾つかの変化球を適度に織り交ぜている。

??『コントロールはなかなかだな・・・』

すぐ隣から声がした。
世渡好男(せわたりよしお)監督。
今回の女子リーグ選手の練習参加は、監督の承諾があったからこそ短期間に実現したと言える。

世渡『ただ、どうしても球威がな・・・』
栗橋『ですね』

スピードガンに記録されている数字を見てみる。
121・91・125・106・94・122・112・120と続いている。
120km台が直球だろう。

世渡『ウチのみずきや、かつての早川あおいみたいに何かあればな・・・まあ、それはそうとして』

カメラの画像を確認している。

世渡『この写真だな。見てみろ』
栗橋『はい』
世渡『実に良いと思わないか?お尻・・・ではなくフォーム全体のバランス』
栗橋『そ、そうですね・・・』

頭が痛くなってきた。
写真の左上には、鍵のマークが表示されている。

栗橋『あの、監督』
世渡『どうした?』

ニヤついた顔のまま、こちらを向く。
正直・・・キモい。

栗橋『神代莉奈さんって、知ってますか?』
世渡『《3人娘》の一人だろ。ありゃ、着痩せするタイプだな。藤乃なつきほどじゃあないと思うけど』
栗橋『・・・』
世渡『まあオレ的にはサドハラの方が・・・』

ダメだこの監督。
早くなんとかしないと。
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