財閥の娘(栗橋)

??『美月、何かあったの?』
西条『あ、ヤバ・・・』

《わっちゃんが本物のレスラーかどうか確かめる》という意味不明な理由で再び椅子から引き離されそうになっていた所で、もう一人の女店員さんが現れた。
茶色の髪を後ろでまとめている。

栗橋『た、助かった・・・』
??『で、どうしてお客さんの脇に手を入れてた訳?』
西条『いや・・・ジャーマンを・・・』
??『・・・話が全然見えないんだけど』
西条『あ・・・彼ね、リトルの幼なじみなの』
栗橋『えっと・・・キャットハンズの栗橋渡です』
??『栗橋・・・ああ、昔は大変だったみたいね』

僅かに笑みを浮かべた。
西条さんよりは背が低いが、それでも160はあるだろうか。
全体的にやや細身でスラッとした感じだ。

西条『それで、久しぶりに旧交を温めようと』
??『ジャーマンで?』
西条『ジャーマンで』
栗橋『・・・』

打ち処が悪ければ、旧交を温めるどころかその頃の記憶まで失いそうだ。

矢部『オイラが立候補するでやんす』
栗橋『や、矢部君!』
西条『うーん・・・ま、いっか。とりあえず後ろ向いてもらえる?』
矢部『ラジャーやんす・・・オイラ、大人になるでやんす!』
西条『よぉ~し・・・』
栗橋『が、頑張って~・・・』

腕をボキボキ鳴らしている。
今の西条さんの目は、まさに獲物を狙う捕食者のそれだ。

??『いや・・・止めないと本当にやるから!』
栗橋『・・・あ、危ない!』
??『え・・・私?』
店長『キーミーターチー?』

茶髪の女店員さんの後ろに店長がいた。
そして彼の手には・・・

店長『ソーレッ!』
??『冷たっ!!』
栗橋『うわ・・・』

両手に持ったグラスの氷水を、あろうことか背中から注ぎ始めた。
それもブラウスの中に直接。

店長『サテト、ツギハ・・・』
??『み、美月・・・危ないから・・・クシュン!』
西条『大丈夫よ、手加減はするから。じゃあ、失礼して・・・』
矢部『やんすっ!?』
西条『せーのっ・・・えいっ!』
矢部『や、やんす・・・』

背後から抱き付く形になる。
そして、少し持ち上げた。

??『じゃなくて・・・後ろ見て!』
西条『後ろ・・・?うわっ!!』
店長『ソーレッ!』
矢部『やんすっ!?』
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