財閥の娘(栗橋)

西条『わっちゃん、ちょっと立ち上がってみてくれない?』
栗橋『あ・・・うん』
西条『うーん・・・やっぱ、わっちゃんの方が高いな~。当時は私の方が高かったのにね』

それでも女性としては相当に高い方だろう。
170・・・いや、175はあるように見える。

栗橋『そういえば、みっちゃんってプロレスも好きだったよね?』
西条『うん。今でも時々は観に行ってるよ。ねえ、新しい技・・・試して良い?』
栗橋『い、いや・・・』

反射的に後ずさる。
当時の記憶が少しずつ蘇ってきた。

矢部『わ、技でやんすか?』
西条『うん。テレビの中継とか見て、見よう見真似で覚えて。大体いつも、わっちゃんで試してたなー・・・』
栗橋『みっちゃんの家に呼ばれて、ビデオ見ながらとかあったね』
西条『上級生とか、他の男の子でも試してみたんだけどすぐ泣いちゃって。わっちゃんだけは我慢強かったから・・・』

それでも、結局は泣かされていた。
何回か刃向かった事もあったが、結局は手も足も出ずに技の餌食になるだけだった。

矢部『う、羨ましいでやんす・・・』
西条『だからさ、今お客さんいないしちょっとだけ・・・』
栗橋『い、いや・・・』

椅子ごと後ずさりながら西条さんを見てみる。
出るとこしっかり出ており、萱島さん以上だろう。
今、技を掛けられたら違う意味で大変な事になってしまうに違いない。

西条『すぐ終わるから、ね?』
栗橋『そ、そういえばさ・・・もう一人、女の子いたよね?』

無理矢理椅子から引き上げさせれそうになった所で、咄嗟に思い付いた質問を口にした。
《お元気ボンバーズ》には、西条さんの他にもう一人女の子がいた。
ポジションはセカンドで、1番とか3番を打っていたような気がする。

西条『ああ、アイミでしょ?』
栗橋『う、うん・・・最近会った?』
西条『いや、全然』
栗橋『そうなんだ・・・。苗字、何だっけ?』

難しい読み方だったので、ほとんど全員が下の名前で呼んでいたと思う。
もっとも、アイミという名前も西条さんに言われて思い出した位だ。

西条『確か・・・しがらき。ムラサキに香りを楽しむで紫香楽藍美(しがらきあいみ)。何回かネットでググってみたんだけど出て来なくて』
栗橋『ネット?』
西条『うん。どっかのクラブチームとかにいると、結構引っ掛かるんだけど・・・全然』
栗橋『今度、知り合いに聞いてみるよ』
西条『お願いね。前に同級生がどっかのバッティングセンターで似たような人を見たらしいんだけど、あまり自信無いみたい』
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