財閥の娘(栗橋)

栗橋『矢部君と同じ、キャットハンズの栗橋渡です。去年まではバスターズにいました』

オレの自己紹介を聞いた途端、店員さんが驚いた顔になった。
こちらをじっと凝視してくる。

西条『・・・あ、やっぱりわっちゃんだ!覚えてる?』
栗橋『えっと・・・』
西条『ほら・・・《お元気ボンバーズ》・・・』
栗橋『・・・ああ!みっちゃん・・・だよね?』

かつてオレが所属していた少年野球チーム、お元気ボンバーズ。
女子ながらエースで4番だったのが、みっちゃんこと西条美月さんだった。

西条『懐かしいな~、そのお好み焼きみたいなあだ名。そういえばこの前、樟葉と来てくれたんだって?』
栗橋『あ、うん・・・』
西条『ちょうど離れた所で試合だったんだよね。ゴメンね』

あの時、萱島さんの言っていた《知り合い》は西条さんの事だったらしい。
彼女の父親は、かつてプロ野球で大活躍した西条慎太郎(さいじょうしんたろう)選手で、彼女自身の実力も抜きん出ていた。

矢部『ななな何と、知り合いだったでやんすか?』
栗橋『うん』
矢部『・・・できれば前回の時も呼んで欲しかったでやんす』
栗橋『矢部君、真っ先にマニアショップ行っちゃったじゃん』
矢部『そういう事ならすぐに駆け付けたでやんす』
西条『その日は私、試合でいませんでしたけど?』
矢部『なら、意味無いでやんす』
栗橋『・・・』

何て分かり易い人なのだろう。
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