財閥の娘(栗橋)

矢部『お初にお目にかかるでやんす。オイラ、キャットハンズの矢部明雄でやんす。俊足巧打が魅力のリードオフマンでやんす!』
栗橋『・・・』

2月の頭くらいに同じような台詞を聞いたような気がする。

??『えっと・・・ああ、眼鏡の!』
矢部『なんとでやんす!オイラの事を知っているでやんすか?』
??『あ・・・はい』

戸惑いながらも答える青髪の店員さん。
女性としてはかなり背が高く、みずき先輩や萱島さん以上だろう。
そして矢部君は何を思ったか、彼女の手を握り始めた。

矢部『今日という日をオイラ達の記念日にするでやんす。・・・でも何処かで見たような気もするでやんす』
??『あ、えっと・・・』
矢部『それはきっと前世からの運命でやんす』
栗橋『こらこら・・・』

半年前と全く変わらない筋書きだ。
ふと、矢部君が女性の手を凝視した。

矢部『・・・やんす?』
??『あ・・・実は私も野球やってるんです』

青い髪の女性が手の平を見せてくる。
明らかに野球経験者のそれだ。

栗橋『ピッチャー?』
??『はい。私・・・女子リーグでピッチャーしてます、西条美月(さいじょうみつき)です』
矢部『と、いう事はでやんす?』
西条『楠葉、元気にしてますか?』
矢部『もちろん元気でやんす。オイラも色々な意味で元気になっているでやんす』
栗橋『・・・』
西条『あ・・・はは・・・』

下ネタにひきつった笑みを浮かべている。
野球の女子リーグに所属してるとは驚きだった。
だが、何となく名前に聞き覚えがある。
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