財閥の娘(栗橋)

栗橋『矢部君、お疲れー』
矢部『お疲れでやんす。夕飯はどうするでやんすか?』
栗橋『特には決めてないかな。近場で適当に済ませちゃう?ハンバーガーとか』

遠征先での練習を終え、これから夕食。
萱島さんもみずき先輩も、今日は約束があるとの事だった。
オレ達二人だと特に気取った店に行く必要もなく、高校の時のようにファーストフードで済ませる事も多い。
・・・プロとしてはどうかと思うが。

矢部『ならでやんす、オイラのオススメの店で良いでやんすか?』
栗橋『矢部君のオススメ・・・?』

前回の一件があるので、少し考えてしまう。
矢部君なんか『怖いでやんす・・・怖いでやんす・・・』と譫言のように繰り返していた。

矢部『・・・今回は大丈夫でやんす。本格的なハンバーガーを出すアメリカンなお店みたいやんす』
栗橋『アメリカンねー・・・』
矢部『見るでやんす』

スマホの画面を覗いてみる。
《可愛い店員さんのいる店、●●近辺》というタイトルの掲示板だった。

栗橋『どれどれ・・・』
矢部『画面を擦ればスクロールするでやんす』

画面をスクロールさせながら掲示板を見てみる。
しばらくは▲▲という喫茶店にいる娘が可愛いとか、■■の駅前にあるバーガーチェーンに胸の大きい娘がいたけど今は辞めたらしい・・・みたいな感じの書き込みが続いていく。
掲示板の空気が一変したのは、とある書き込みが発端だった。

《▼▼駅から結構歩くけど(中略)いかにもアメリカって店があって、そこの女の店員さんがスゲー可愛かった》
《↑釣り乙》
《オレもそこ行った事あるけど二人とも上玉だぞ。飯もウマイし》
《↑kwsk》

それ以降は、ほとんどその話題で持ち切りになっていた。
掲示板の書き込みを見る限りでは、彼女達がいる日といない日があるらしい。

《駄目だった・・・》
《今日も会えなかったお(´・ω・`)》
《6戦全敗中》
《いなかった・・・・゚・(つД`)・゚・》
《↑オマイ嫌われてんだよw》
《↑うっせーハゲ》
《###このカキコミは削除されました###》
《###このカキコミは削除されました###》
《おまいらケンカすんな》
《もう都市伝説とかの類じゃない?》

栗橋『なんだかなー・・・』
矢部『もっと下でやんす』
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