財閥の娘(栗橋)

みずき『ふぅ・・・食った、食った。お腹一杯だね』
矢部『大満足でやんす』

店から出て、タクシーが拾える大通りまで歩いてる途中だ。
吹いてくる夜風が心地良い。

栗橋『良かったですね。藤乃さんと再会できて』
みずき『・・・うん、ホントに今日はありがとね。特に楠葉』
萱島『いえ、私は別に・・・』

最初はぎこちなかったが、時間が経つにすれ緊張もほぐれてきたように見えた。
藤乃さんの一件だけでなく、萱島さんにとっても来て良かったと思う。

みずき『また行きましょう』
萱島『はい。気に入ってもらえて良かったです』
矢部『楽しかったでやんす』
栗橋『あれ?そういえば・・・何か忘れてるような・・・』
みずき『なつき?大丈夫でしょ。ユリちゃんが連れて帰るって言ってたし』

最後には酔い覚ましの為の烏龍茶を持ってきてくれた。
本当によく気が付く娘だと思う。

栗橋『そう言えばそうですね』
萱島『でも、大丈夫なんでしょうか?店長も結局戻りませんでしたし・・・』

結局、会計も三国さんに支払う形になった。
防犯面とか、色々と大丈夫なのだろうか?

みずき『ああ、それは大丈夫よ。問題無いわ』
萱島『そうですか?』
みずき『うん。・・・ええと、セ●ムしてるって』
矢部『でも、ステッカー貼ってなかったでやんす・・・グギャ!でやんす~』

小気味良い音が夜道に響き渡る。
例の棒だ。

みずき『・・・眼鏡、合ってないんじゃない?』
矢部『そ、そんな事は無いでやんす・・・』

大通りに出た。
丁度止まっていたタクシーに、みずき先輩と萱島さんが乗り込む。

みずき『それじゃ、今日は解散。また明日・・・じゃなくてまた今日ねー』
萱島『お先に失礼します。お疲れ様でした』
栗橋『ご馳走様でした。おやすみなさい』
矢部『おやすみでやんす』
萱島『先輩、ちょっとちょっと・・・』

タクシーに乗り込もうとする萱島さんに手招きされる。

栗橋『どうしたの?』
萱島『・・・先輩のドスケベ』
栗橋『う・・・』

タクシーのドアが閉まり、それを合図に動き出す。
矢部君に話しかけようとした、その時だった。

矢部『やんす?』

走り出したと思ったタクシーが、少し先で停止した。
ドアが開き、中からみずき先輩が出てくる。
誰かと電話しながら何処かへと行ってしまった。

栗橋『何だろうね?』
矢部『慌てていたでやんすね』

そしてその日の午後・・・眠そうな顔をしていたみずき先輩に、グチグチと叱られた。
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