財閥の娘(栗橋)

萱島『ユリちゃん、おかわりおねがーい』
矢部『オイラもおかわりでやんす』
ユリ『はーい、少々お待ち下さい。・・・栗橋さんはどうしますか?』
栗橋『あ、じゃあオレも』

注文を受け、カウンターに戻っていく。
みずき先輩と藤乃さんは、久しぶりの再会に花を咲かせていた。

みずき『アンタ、高校でちゃんとやってんの?』
なつき『ん~、それなりにはやってんじゃな~い?』
矢部『店長、遅いでやんすね』
萱島『欲しい食材が売り切れだった、とかじゃないですか?』
栗橋『伊勢崎先輩も戻ってこないですね』
みずき『自己管理もロクにできていない奴なんか、放っておきましょう』
矢部『手厳しいでやんす・・・』

未だに伊勢崎先輩、そしてオカマ店長の姿が見えない。
店長はともかく、先輩は体調でも悪いのだろうか?

ユリ『お待たせしましたー』
矢部『どうもでやんす』
みずき『・・・ねえ、ユリちゃん』

空いたグラスを回収しようとする手が止まる。

ユリ『はい、何でしょう?』
みずき『あのバカはともかく・・・店長がいないっていうのは大丈夫なの?』
ユリ『一応、入口閉めて貸し切りにはしてますけど・・・もう一度、連絡取ってみますね』

スカートのポケットから携帯電話を取り出し、耳に当てる。
しばらくして首を横に振った。

栗橋『あれ・・・?』
矢部『どうしたでやんすか?』
栗橋『今・・・何か叫び声が聞こえたような・・・』
みずき『その辺の野良猫でしょ。あれ?そういえば・・・』
萱島『前にもそんな事ありましたね。ちょうど今はそういう時期なのでしょうか?・・・あ、これ美味しいです!』

この辺りは結構多いのかもしれない。
皿から一つ摘んで食べてみた。

栗橋『うん・・・美味い』
ユリ『お待たせしましたー』
矢部『そろそろ食べ物が無くなりそうでやんす』
なつき『もぐもぐ』
萱島『ユリちゃん、何かできるのある?』
ユリ『えっと・・・コレとコレなら・・・』
みずき『・・・』

載っているメニューの2つを指差す。
一方みずき先輩は、少し前からじっと何かを考え込む仕種を見せていた。

萱島『じゃあ、両方お願いね』
なつき『あとコレも』
ユリ『かしこまりましたー』
みずき『・・・ちょっと待って!』
栗橋『え?』
みずき『・・・来て』

突然立ち上がったみずき先輩が、三国さんの手を引いた。
そのまま、入口の鍵を開け外に出ていってしまう。

矢部『やんす・・・?』
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