財閥の娘(栗橋)

萱島『着きましたよ』
伊勢崎『何というか・・・』
みずき『全く周辺の風景に溶け込んでいないわね・・・』

オレ、矢部君、萱島さんの3人に、みずき先輩と伊勢崎先輩を加えたオレ達5人は例の店の前にいた。
先週来たばかりで、今回が3回目になる。
相変わらず電飾ネオンは下品な輝きを放ち、周辺の景観を損ねていた。

みずき『本当に、ここ・・・?』
萱島『週に何回かは来ているみたいですよ』
伊勢崎『と、とりあえず入ろうか・・・』
栗橋『はい・・・』

オレ達5人は、意を決してオカマの園へと進んで行った。
萱島さんがドアを開ける。

萱島『みーわちゃーん!』
矢部『やんすー』
みわ『はいは~い。楠葉ちゃん達ね、いらっしゃい。あら、そちらの方達は初めてかしら?』
伊勢崎『な・・・』
みずき『うわ・・・』

大先輩方二人は予想通りのリアクションだった。
まあ、無理もない。

みわ『ささ、座って座って。メニューこちらね』
みずき『あ、どうも・・・』

多人数という事もあり、テーブル席に案内される。
前回、元キャットハンズの藤乃なつきさんと座った席だった。
今日は来てるだろうか?

伊勢崎『えっと、とりあえず・・・ん?』
ユリ『先生、飲み過ぎですよ~。今日だって頭痛いって、ずっと寝てたじゃないですか~』
なつき『いいから、黙ってお酌しなさーい!!』
みずき『なにあれ・・・』

お目当ての人物はカウンター席にいた。
隣には女子高生店員の三国由利(みくにゆり)さんもいる。

みずき『ねえ、まさか・・・ここって、そういう店?』
萱島『ええっと・・・』
栗橋『・・・』

今日も三国さんはセーラー服姿だった。
白のブラウスにブルーの膝上スカート。
上にエプロンを着けているとはいえ、こういった店にセーラー服姿の女の子がいるのは相当な違和感がある。

矢部『あれは恋恋高校の夏服でやんす』
伊勢崎『恋恋って、あおい先輩の?』
矢部『やんす。ここからはそんなに離れていないでやんす』
みずき『大丈夫なのかしら・・・』
みわ『ユリちゃーん!こっちお願いできるー?』
ユリ『はーい』

三国さんがオカマ店長に呼ばれ、厨房へ戻っていく。
カウンター席にいた酔っ払いの女性、藤乃なつきさんがこちらに気付いた。

なつき『ちょっとアンタ達!なにジロジロ見て・・・み、みずき?』
みずき『アンタ・・・なつき?』
伊勢崎『・・・藤乃?』

藤乃さんがオレ達に気付いた。
みずき先輩が駆け寄る。

なつき『う・・・』
みずき『なつきでしょ?何で連絡寄越さないのよ!』
なつき『ちょっ・・・そんなに揺らすと胃の中身が・・・』
みずき『え・・・?』
ユリ『・・・先生、早く!』

いつの間にか近くに来ていた三国さんが、藤乃さんの手を引きトイレへと連れて行く。

なつき『うぅぅ・・・ォェッ・・・』
栗橋『うわぁ・・・』
矢部『やんす・・・』

藤乃さん達を見ている矢部君の眼鏡が、困った時の形になっていた。
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