財閥の娘(栗橋)

??『栗橋君、どうしてもダメかしら?』
栗橋『すみません・・・』

オレの目の前にいるのは、黒いスーツ姿の女性。
以前、遠征先で萱島さんとハンバーガーを食べに行った帰りに遭遇した。
その後でもう一度会ったので、今日で3回目になる。

??『じゃあ彼女に直接聞こうかしら・・・』
栗橋『な・・・』

2回目と今回の遭遇では、オレ一人というのが不幸中の幸いだろう。
彼女が萱島さんに何を言ったのかは不明だが、萱島さんの怯えた顔だけは忘れられない。

??『だったら代わりに聞いておいてくれない?』
栗橋『・・・何をですか?』

勿論、それを聞く気など無い。
とりあえずこの場だけはやり過ごそう、そう考えていたその時だった。

??『そうねぇ、まずは・・・あら?』
??『ごめんなさい、遅くなりました!』

突然オレの後ろから声が聞こえた。
黒スーツの女性も、一旦質問を中断してそちらに向く。

栗橋『あ・・・』
??『栗橋さん、お待たせしました!すみません、せっかく誘っていただいたのに・・・』

白いサマードレス姿の女の子が割って入ってきた。
その顔に見覚えがある。

栗橋『えっと・・・』
??『さ、行きましょう』
??『ちょ、ちょっと・・・!』

キャットハンズに入団して初のキャンプ。
練習(?)初日の夜にサインを求められた女性で、確かサオリと名乗っていた。
念の為言っておくが、決して誘ったりしてはいない。

サオリ『ほら、早く行きましょう?』
栗橋『あ、うん・・・』

手を繋いでアイコンタクトを送ってくる。
今は口裏を合わせて、という事だろう。

サオリ『・・・ちょっと?何するんですか?』
??『邪魔しないでくれるかしら?』

黒スーツの女性が、白い服の女性の手を掴んでいる。
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