出会いと再会(なつき)

都城『ちょっと宗太郎。人を変態みたいに言わないでよっ』
延岡『だって変態じゃん』
都城『なんですって!喰らえっ、美月ちゃん直伝の!!』
延岡『ギャー!痛い痛い、やめろ~!!』
なつき『・・・』

仲良くじゃれ合いを始めてしまった。
周りからは『代わってくれ~!』と声が上がっている。
一見すると清楚なお嬢様といった外見だが、本質的には延岡と同じなのかもしれない。

ユリ『それって本当なんですか?』
遥『うん、証拠見せてあげようか?』
なつき『証拠?』

遥がベンチに置いてあった週刊誌を手に取り、丸めた。
そして、イトコ同士仲良くじゃれ合っている所に歩いていく。

都城『この~!』
延岡『ギブギブー!』
遥『せーの・・・』
ユリ『・・・』

隣にいるユリが息を飲む音がする。
そして週刊誌が振り降ろされ、小気味よい音がした。

都城『きゃん!・・・って、遥先輩。もう、いきなり何するんですか?嬉し・・・じゃなくて、ビックリしましたよ』
遥『ね?』
なつき『・・・』

怒ってるというよりは、喜んでいるような表情だ。
顔が上気しているのは、夏の暑さのせいだけではないだろう。

都城『うう・・・こうなったら宗太郎の恥ずかしい事も暴露してやる~』
延岡『オレ?』
ユリ『あ、聞きたいです』

今度は、少しムスッとした表情をしている。
スポーツドリンクをもう一口飲んだ。
冷たくて美味しい。

都城『コイツの部屋、あおいさんのグッズだらけなの』
延岡『・・・いや、それ皆知ってるし』

周りの部員達も、何を今さらという表情をしている。
球団から発売されたグッズは、一通り買い揃えているらしい。

都城『・・・何とかっていうゴシップ誌にあおいさんが載った時は、2冊買ったのよね』
延岡『片方は保存用な。そしてもう一冊が』
なつき『はいストップ』

スポーツドリンクを飲みながら、さも当然のように答える。
堪えている様子は全く無い。

ユリ『それって、よく芸能人のパン●ラとか載るやつですよね?』
なつき『・・・パン●ラ言うな』
都城『そうそう。時々取材受けたりするんだけど、短いスカート履いてる時は要注意ね。あとノースリーブとか』
ユリ『あー、確かに・・・』

以前みずきさんが載った時には、球団として抗議したらしい。
みずきさん自身も厳重注意を受けたらしく、何度か話(というか愚痴)を聞かされた事もある。
私はというと、せいぜい胸のアップが載った位だ。

遥『なつきは大丈夫?』
ユリ『パン●ラどころか、もーっと凄いのありますよ?』
都城『凄いの?』
ユリ『はい。去年の・・・』
なつき『ス、ストップストップ!!』

あまりにも覚えがあり過ぎる。
一生の不覚だ。

延岡『ほら、合宿の・・・』
都城『ああ、あれそんなに凄かったの?』
ユリ『はい。パン●ラどころじゃなかったですよね~、あの水着』
延岡『前も後ろもほとんどヒモッ!自分らも水着だったから、もうヤバイヤバイ・・・』
なつき『・・・』

延岡が大袈裟なジェスチャーを交えて話す。
女子マネージャーの中には、明らかに嫌悪感を現わしている娘もいた。
それが正常な反応なのだろう。

遥『へえ・・・じゃあ今度、それ着て海かプールにでも行こうか?』
都城『興味ありますね、なつき先輩の凄い水着』
なつき『・・・絶対イヤ』

海岸に部員以外の人間がいなかったのが不幸中の幸いだ。
そういえば、今年の合宿はどうするのだろうか。

ユリ『わ、私も御一緒して良いですか?』
延岡『オ、オレもお願いしまっス!』
都城『宗太郎はダ~メ。男子禁制』
延岡『じゃ、じゃあ後で写真だけでも・・・』
遥『変な事に使うんでしょ?』
なつき『着ないし行かない・・・』
ユリ『楽しみですねー』
都城『ねー』
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