出会いと再会(なつき)

なつき『今年は入りの方どうなの?』
遥『女子リーグ?・・・うーん、あんま変わらないかな』

充電器に挿したままの携帯電話から、遥の声が聞こえてくる。
本西遥(もとにしはるか)。
女子リーグに所属するピッチャーで、私と同学年だ。

なつき『そろそろデーゲームだと暑いんじゃない?』
遥『うん。この前の日曜なんかボロボロだった』
なつき『ああ、あのクソ暑かった日?』
遥『うん。私もそうだったけど、守備もエラーしまくり』

この時期は、寒暖の差が激しい。
真夏に近い日もあれば、3月位に涼しく感じられる日もある。

なつき『・・・今日も暑いな』
遥『ホントにねー・・・』

今夜は特に蒸し暑い。
私は、他人には決して見せられない格好をしている。

なつき『うー、あつ・・・』
遥『修理、いつ来るの?』
なつき『来週』

シャツを捲り上げ、扇風機の風を入れる。
先日、今年初めて部屋のクーラーを入れたがピクリとも動かなかった。
修理が来るまでに少し時間がかかるらしく、それまでは近くのホームセンターで購入した扇風機を使っている。

遥『この前、久々にリナと会ったよ』
なつき『何か言ってた?』
遥『彼とは相変わらずだって』
なつき『そっか・・・あー、暑い』

汗でベタベタだ。
もう一度、寝る前にシャワーを浴びる事にしよう。

遥『大丈夫?あー、涼しい・・・』
なつき『・・・』

クーラーで涼んでいる様子が伝わってくる。
携帯電話越しに涼しい風を送ってもらえないかと、馬鹿な事まで考えてしまう。

遥『夏の大会、そろそろじゃない?』
なつき『うん』
遥『勝てそう?』
なつき『分かんない』

やってみるまでは。
一発勝負。
負けたら終わり。
特に夏の大会は、三年生にとって重要な意味を持つ。

遥『女の子のキャプテン、次の夏で最後なんだよね?』
なつき『うん』

ユリにとって、次の夏が最後の大会となる。
負けた時点で、引退しなくてはならない。
これまで散々な目に遭わされもしたが、そう考えると少しだけ寂しかった。

遥『下には女の子いないんでしょ?』
なつき『そう。マネージャーだけ』

ユリと相談して、次のキャプテンの候補を決めておかなければならない。
おそらく、延岡で決まりだろう。
実力的には申し分なく、普段の言動はアレだが野球に対してだけは真面目だ。

前に胸を触られた事があったが、それも今では青春の一ページに・・・なる訳がない。
思い出すとムカムカしてきた。
今度、改めて説教しよう。
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