出会いと再会(なつき)

遥『お、今のなかなか良かったんじゃない?』
なつき『ああ』
遥『見た感じ、基本的な事は一通り出来てるよね』
なつき『教えた監督が素晴らしいからな』

冗談で返しつつ、ベンチからグラウンドを見る。
野球部員達がいつも以上に気合の入った練習をしていた。
動き一つ見ても、明らかに普段とは違う。

遥『うん。私もそう思う』
なつき『・・・いや、そこは突っ込むトコだから』
遥『あれ?そうなんだ』
なつき『・・・』

練習の中心にいるのは一人の女性。
ユリよりも少し背が高く、長い髪を後ろで結んでいる。
年齢は、私や遥より一つ下だ。

遥『前に見た試合なんか酷かったもん』
なつき『試合?』
遥『うん。たまたま近くで高校野球の試合やってたから観に行ったんだけど、もう最低最悪』
なつき『ふーん・・・』
遥『バス何とか高校って言ったかな?監督に抗議しに行こうかと思った』

余程酷かったのだろう。
監督になってからまだ二年だが、これまでに対戦した学校の中にも何人かとんでもない監督がいた。
向こうの部員達が不憫に思えたものだ。

なつき『ほら』
遥『ありがと』

クーラーボックスからスポーツドリンクの入ったペットボトルを渡す。
自分の分も取り出し、少し飲んだ。
五臓六腑・・・じゃなく全身に染み渡る感じがする。

なつき『シーズン中なのに、悪かったな』
遥『ううん。あおいさんの出身校だから興味もあったし』
なつき『・・・そうか』
遥『あの器材、あおいさんからでしょ?』
なつき『・・・ああ』
遥『ん、どうしたの?』
なつき『いや、大丈夫』

何故、ここ恋恋高校グラウンドに遥がいるのか、それは約一週間前に遡る。
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