新天地へ(栗橋)

荷造りが一段落し、思わず溜め息が出た。
思っていた以上に物が多く、ある程度処分しても相当な量が残ってしまった。
さすがに2年連続でこんな苦労はしたくない。オレみたいな立場の人間は、来年から一年一年が勝負になる。

オレの名前は栗橋渡(くりはしわたる)。入団5年目のシーズンを終えたプロ野球選手だ。

左の大砲として期待をされ、新興球団のシャイニングバスターズに入団。

高卒1年目から二軍のクリーンナップを任され、それなりの成績を残した。

2年目も、ファームのホームラン王が狙えるペースで打ちまくり、夏が終わる頃に一軍初昇格。
一軍でも勢いは衰えることはなく、あと少しで3割に達する打率と5本のホームランを放つ大躍進の年となった。

そして3年目、オレは開幕を5番・サードで迎えた。結局この年は、15本のホームランを打った。
しかしこの年、課題も多く見つかった。ホームランは15本だが、打率は.230台で打点はたったの32点。
徹底的に弱点を攻められ、三振を量産。チャンスになると、さらに打てなかった。

4年目はもっと散々だった。シーズンのほとんどを一軍で過ごすも打率は2割に届かず、ホームランも7本と半分以下に終わった。

そして今年、5年目は開幕を一軍で迎えるが一ヶ月もたず二軍落ち。
夏場に再度昇格するも僅か数試合で登録抹消、結局この年は1年目以来のホームラン無しに終わった。
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