フォーム改造(ヒスイ)

相変わらず、グラウンド上では《紫》の選手達がノックを受けていた。
そして端の方では、円さんと美月さんがキャッチボールをしている。

翡翠『・・・おっと』

スッポ抜けたボールがこちらに飛んできた。
目の前でワンバウンドしたボールを掴み、円さんに返す。

城咲『ありがと』
西条『ごめーーーん!!』

軽く手を上げて応え、私は回想に戻った。
《タカコ》というのは一体どういう人物なのだろうか?
一度アリスに聞いてみたが、知らない方が身の為だとか言われてそれっきりだ。

そもそも、あの場に《あの人》がいた事自体がよく考えてみるとおかしい。
妙なゴーグルを付けて、一体何をやっているのだろうか。

ただ、(素顔は出していないとはいえ)アサギにも一度会っている。
それに、もしかしたら別の所でアサギに会っている可能性が無い訳では無い。

翡翠『・・・だったら』

接触しない手は無い。
サイン会か何かで連絡先を渡し、オフシーズンに会うのが無難なやり方だろうか?
ただ、成り行きとはいえ《あの人》と私は一度敵対している。
まずは、その時の事を謝罪するのが先かもしれない。

翡翠『・・・』

いや、よく考えたら元々の原因は《あの人》の仲間がアサギにちょっかいを出した事。
しかも(不可抗力とはいえ)私自身、胸をわしづかみにされている。
半泣き状態だったアリスと怒りが収まらないアサギを宥めるのに苦労したが、泣いたり怒ったりしたいのは私の方だった。
・・・実際、泣いたけど。
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